Hatena::Groupianhu

kmiura このページをアンテナに追加 RSSフィード


日常生活では、どんな店屋の主人でもしごくあたりまえに、ある人が自分がこうだと称する人柄と、その人が実際にどういう人であるのかということを区別することぐらいはできるのに、わが歴史記述ときては、まだこんなありふれた認識にさえも達していないのである。それは、あらゆる時代を、その時代が自分自身について語り、思い描いた言葉どおりに信じ込んでいるのである。    『ドイツ・イデオロギー』

私家版・従軍慰安婦問題のリンク集(2008・8)

070621

[keywords] 性奴隷制つづき3 20:42 はてなブックマーク -  [keywords] 性奴隷制つづき3 - kmiura  [keywords] 性奴隷制つづき3 - kmiura のブックマークコメント

Siffmuscleさんによるテキスト化。ありがたや。しばし検討、後にキーワード化”性奴隷制の定義”。

VAWW-NET JAPAN翻訳、松井やより前田朗 解説

『増補新装2000年版 戦時・性暴力をどう裁くか 国連マクドゥーガル報告全訳』、2000年、39~42頁より引用

第2章 犯罪の定義

第2節 奴隷制(性奴隷制を含む)

  ◆27

一九二六年の奴隷条約*による奴隷制の定義は、最初の包括的な、そして現在でも最も広く認められているものである。一九二六年の奴隷条約によれば、「奴隷制」とは、ある人に対して所有権に伴う権能の一部または全部が行使される場合の、その人の地位または状況であり、強かんその他の性暴力による性的アクセスも含まれる。

 ◆28

奴隷制の禁止は、条約法*に加えて、国際慣習法*のユス・コーゲンス規範の一つである。奴隷制の罪は政府の関与または国家の行為がなくても成立し、国家の行為者によるものであろうと民間の個人によるものであろうと、国際犯罪に相当する。さらに、奴隷制とは人を所有物として扱うことを指すが、その人が金銭で売買されなかったからといって、奴隷制であるという主張が崩れることはない。

 ◆29

奴隷制の定義には、自己決定権、移動の自由、自己の性活動に関する事柄の決定権の制限などの概念も内在している(14)。個人的には被害を受ける相当の危険を犯して奴隷状態から逃げることができたとしても、それだけで、奴隷制ではないと解釈してはならない。奴隷化された人が抱く、害を受けることへの当然の恐れや威圧をどう受け止めるかなどの解釈にあたっては、すべてのケースで、被害者の主観とジェンダー意識に基づく分析が行われなければならない。このことは、国内外の紛争で、被害者が戦闘地域にいて、敵対する集団や一派の一員とされている場合には特にあてはまる。

 ◆30

「性的な」という用語はこの報告書では奴隷制の一形態を説明する形容詞として使われており、別個の犯罪を示すものではない。あらゆる意味で、またあらゆる状況で、性奴隷制は奴隷制であり、その禁止はユス・コーゲンス規範である。第二次正解大戦中日本軍が維持運営した「慰安所」(付属文書参照)や旧ユーゴの既に十分に証明されている「強かん収容所(ルビ:レイプ・キャンプ(15))は、性奴隷の特に凄まじい事例である。性奴隷制には、女性や少女が「結婚」を強要されるケースや、最終的には拘束する側から強かんなど性行為を強要される家事労働その他の強制労働も含まれる。

(略)

 ◆31

奴隷制にはまた、すべてではないとしても大半の形態の強制春も含まれる。「強制売春」あるいは「売春の強制」という用語は、国際条約・人道条約に登場するが、これまでのその理解は不十分であり、適用も首尾一貫して行われてはこなかった。「強制売春」とは一般に、他人に支配されて性的行為を強要される状態を意味する。

 ◆32

強制売春のかつての定義は、女性の「名誉」に対する「不道徳な」攻撃というあいまいな表現だったり、さもなければ、奴隷状態の説明と区別できないほど不十分なものだった。このような限界はあるものの強制売春の罪は、ジュネーブ条約とその両追加議定書ではっきりと犯罪とされているので、将来、武力紛争下の性暴力を訴追するための、もう一つの手段になる可能性がある。

 ◆33

原則として、武力紛争下では、強制売春と呼びうる実態はたいていの場合、性奴隷制に相当し、奴隷制として特徴づけたほうが、より適切に、より容易に、訴追することができるだろう。

----

【用語解説】

*(原文は▼、以下同じ)奴隷条約

 一九二六年九月二十五日に成立した国際連盟時の条約で、今日も有効である。全十二条からなり、締約国に奴隷売買の禁止と奴隷制度の廃止義務を課し、そのための措置(相互扶助、国内法の処罰規定、通報等を規定する。

第一条は次のように定義する。

「この条約の適用上、次の定義に同意する。

1 奴隷制度とは、ある人に対して、所有権に伴う権能の一部または全部が行使される場合の、その人の地位または状況をいう。

2 奴隷制度とは、その者を奴隷の状態に置く意思をもって行う個人の捕捉、取得又は処分に関するあらゆる行為、その者を売り又は交換するために行う奴隷の取得に関係するあらゆる行為、売られ又は交換されるために取得された奴隷を売り又は交換することによって処分するあらゆる行為並びに、一般に、奴隷を取引し又は輸送するすべての行為を含む。」

  日本政府は、この最も古い人権条約をいまだに批准していない。また、日本政府は、付属文書に示されているように、奴隷制の禁止は第二次世界大戦時の国際慣習法ではないと主張している。(同書、132~133頁)

条約

 国際法法源としての条約による規範のこと。広い意味での条約とは、国際法主体(主に国家)間に締結され、一定の法的効果を生み出すあらゆる合意をさし、「条約」という名称を持つとは限らない。条約、協定、協約、合意等の総称が条約法である。国際法法源には、条約のほかに、国際慣習がある。また、法の一般原則、判例・学説に法源を認めるか否かは争いがある。(同書、129頁)

国際慣習法

 国家の一定行為が長期にわたる継続的反復からなる慣行となっており、その行為が法的義務に対応したものであるとする法的信念が存在する場合、国際慣習法が成立したとされ、国際法法源とされる。成立した国際慣習法の適用範囲は、条約とは異なり、一般にすべての国に及ぶとされる。(同書、128頁)

▼ユス・コーゲンス(強行規範

 いかなる場合にも逸脱を許されない一般国際法規範で、後に成立する一般国際法の強行規範によらなければ変更できない規範のこと。条約法に関するウイーン条約十三条に規定されている(本文第36項参照)。任意的国際法規範が強行規範と抵触する場合、それが強行規範より後の法であったり、特別法であっても、無効とされる。(同書、127頁)


【参照文献】

(14) M. Cherif Bassiouni,"Enslavement as an International Crime", New York University Journal of International Law and Politics vol. 23 (1991) p. 458.

(15) 例として、ICTFY, ガゴビッチその他に対する起訴状、事件番号IT-96-23-I (26 June 1996)(以下、「フォチャ事件起訴状」) 参照. (同書、147頁)

取り消し部・太字はkmiuraによる”おそらくタイポなので訂正”部分。

トラックバック - http://ianhu.g.hatena.ne.jp/kmiura/20070621