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kmiura
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Re:11、全体批判、中岡望さん
中岡望さんの2007年ワシントンポスト広告"THE FACTS"批判。米国側の当時の脊髄反射を詳しく解説。
http://www.redcruise.com/nakaoka/?p=222
2007/7/11 Wednesday
従軍慰安婦問題に関する「意見広告」に見る日本人の“品格”
6月16日、日本の学者、ジャーナリスト、政治家など44名が署名した従軍慰安婦問題に関する全面の意見広告が『ワシントン・ポスト』紙に掲載されました。この意見広告を読んだ議員は態度を硬化させ、共同提案者に名を連ねる議員の数は増え、最終的に共同提案者は140名以上になりました。同広告は、議員を説得するよりも逆に怒らせてしまったようです。6月26日に下院外交委員会は、従軍慰安婦に対する日本政府の正式な謝罪を求める「決議案121号」を39対2の圧倒的多数で承認しました。次は下院本会議で採決されることになります。委員会の採決を受けペロシ下院議長は「同決議案が下院本会議で採択されることを希望する」と述べています。私が『ワシントン・ポスト』紙に掲載された意見広告を読んで感じたのは、「ジャーナリスト35年の経験の中で、これほど醜悪で品格のない文章はない」というものでした。正直、どのような意識でこうした品格のない文章が書けるのか不思議でなりませんでした。意見広告の最大の主張は、「慰安行為を強いた確固たる証拠はない」ということです。その主張は、最近、沖縄における“集団自決問題”で教科書から“日本軍による強制”という文章が「確固たる証拠がない」という理由で削除され、自決で家族を失った沖縄の住民や自治体が文部科学省に抗議しました。その事実と意見広告がオーバーラップします。態度を保留していた多くの下院議員が、この稚拙な”大本営発表”歴史観を訴える「意見広告」を読んで決議案賛成に回ったのは、理解できます。多くの以下、意見広告の紹介と、採決前と採決後のアメリカのメディアの反応を分析します。
まず「意見広告」の内容を紹介します。同広告の標題は「The Facts」で、文中には5つのファクト(事実)に関する説明が行なわれています。以下、簡単に要約します。「事実1」では、「女性が意に反して日本軍によって強制的に売春行為を強いられたことを積極的に示す歴史的な文書は歴史家あるいは研究機関によって発見されていない」と指摘しています。さらに、「民間の業者に対して意志に反して女性に労働を強いることを警告している多くの文書が存在する」とし、その1つの例として陸軍省通牒2197号の「軍慰安所従業婦募集に関する件」を挙げています。同通牒では具体的には「軍の名前を不当に使用した方法」「誘拐と判断されるような方法」を明確に禁止し、「そうした方法で募集した者は処罰される」と描かれていると指摘しています。要するに強制あるいは拉致される形で従軍慰安婦が集められた事実はなく、軍はそうした行為を禁止していたということです。
「事実2」では、「これらの指令(陸軍通牒)は忠実に実行されたことを示す多くの新聞記事が存在する」と指摘しています。さらに、その具体的な新聞記事を紹介しています。
「事実3」では、陸軍の指令に反した例としてインドネシアのセマラン島でのオランダ人女性グループを「強制的に慰安所」で働かせた事実は認めつつも、「この事件が明らかになったとき、責任者は処罰された」と説明し、強制的な従軍慰安婦の存在は例外的であると主張しています。さらに、「この事件に関与した軍人はオランダ法廷で裁かれ、死刑を含む重い処罰を受けている」と指摘しています。
「事実4」では、「米下院のホンダ議員などが提出した従軍慰安婦に対する日本の不当な扱いを非難した下院決議案121号は、ほとんどがかつての従軍慰安婦の証言に基づいたものである」とし、「こうした証言は“反日”キャンペーンが始まった後に行なわれたものである」と、その正当性に疑問を投げかけています。要するに従軍慰安婦問題は、反日キャンペーンの一環として主張されているもので、根拠がないということです。
「事実5」では、「日本軍に配属された慰安婦は一般に報道されているように“性の奴隷”ではなかった」と指摘し、「慰安婦は、当時、世界で一般的であった公娼制度のもとで働いていた」と、その正当性を主張しています。さらに「多くの慰安婦は佐官や将軍よりも高い所得を得ており」、「兵士が民間人を対象に強姦を行なうのを防ぐために多くの国は軍のために売春宿を設置している」と、従軍慰安婦問題は日本に限定されるものではないと主張しています。さらに「占領軍は1945年に日本政府に対して、アメリカ兵の強姦行為を防ぐために衛生的で安全な“慰安所”を設置するように求めている」と、アメリカ軍でさえ同様な状況にあったと指摘しています。
結論として、「残念なことに、多くの女性は第二次世界大戦中に悲惨な苦しみを味わった。私たちは、深い後悔の念を持って、こうした悲劇的な歴史的現実を直視している」とし、「同時に、私たちは、日本軍が20世紀において最大規模で行なわれた人身売買の1つとして“若い女性に性的奴隷になるように強制する”罪を犯したと主張するのは、現実を大きく、しかも意図的に歪曲したものであると指摘せざるをえない」と、下院決議案の不当性を主張しています。さらに「約20万人といえる慰安婦の5分の2は日本人の女性であった」と、“お門違い”の指摘をしています。最後に「事実に基づかない誹謗と事実の歪曲のもとで謝罪することは、日米の友好関係に否定的な影響を及ぼすことになる」と、警告しています。
こうした主張を読んで感じたのは、どのような歴史観に基づいて戦争を理解し、その戦争の中で起こった事態を理解しようとしているのかということです。戦争は常に非条理な事態が起こるものです。特に戦争の最前線では理解しがた事態が起こるものです。それが意図したものであれ、偶発的に生じたものであれ、多くの悲惨な事態は起こるものです。安倍首相は訪米に先立って従軍慰安婦を強制したという「確固たる証拠はない」と語り、アメリカのメディアの批判を買い、ブッシュ政権は当惑しました。「確固たる証拠」とは一体何を意味するのでしょうか。「意見広告」や政府の対応に見られる姿勢は、いわば大本営発表の事実に基づく歴史理解のような気がします。
アメリカのメディアの報道と対応
アメリカの主要メディアは同意見広告に関する記事をほとんど掲載していません。ただオーストラリア、韓国、中国、他のアジア諸国のメディアは極めて積極的に報道しているのが特徴です。「意見広告」だけでは記事にならないというのがアメリカの報道姿勢だと思われます。ただ、共同、朝日新聞、読売新聞などは、「同意見広告が逆効果となり、下院での決議案の採決を促すことになった」と現地からの情報を伝えています。以下、報道された記事に関する要約です。
AFP電(6月18日)は、以下のように報道しています。「日本の政治家44名がワシントン・ポスト紙に全面広告を掲載し、日本軍が女性を性的奴隷になるように強制した事実を否定した」と、「意見広告」を紹介しています。そしてコメントとして「20万人の若い女性、その大半は朝鮮人であるが、中国人やインドネシア人、フィリピン人もおり、日本軍の慰安所で性的奴隷として奉仕することを強制された」「安倍首相は3月に帝国陸軍が直接数千人の慰安婦を強制的に慰安所に連行した証拠はないと発言して論争に火をつけた」「それ以降、安倍首相は歴史的な1993年の女性に対する謝罪を支持し、女性に深い同情の念を表明している」と、この問題の経緯を書いています。さらに同報道は「米議会は来週、下院外交委員会で日本に正式謝罪を求める決議案の議論を始める」とし、決議案の文章や内容を検討する“マーク・アップ・セッション”で議論が行なわれ、同委員会の決議を経て、下院本会議に送付されると書いています。
ワシントン情報に強いThe Hillは、アメリカの政治状況に関して詳細な記事を掲載しています。以下、その要約です。「数ヶ月におよぶ韓国系アメリカ人のロビー活動は、下院外交委員会が決議案を取り上げる来週、クライマックスを迎える」「皮肉にもキャンペーンは、日本の政治家や学者グループがワシントン・ポスト紙に女性が強制的に性的な奴隷にされた事実はないという意見広告を掲載してことで成功することとなった」と指摘しています。議員の反応として、「議会筋は決議案に対して迷っていた議員の多くは(この意見広告で)支持に回ったと述べている」と伝えています。
The Hillは、同大使館の活動についても書いています。大使館は「日本政府は何度も謝罪の意を表明し、1994年の村山首相の謝罪、小泉前首相の元従軍慰安婦に対する個人的な書簡などを取り上げて、決議案に反対を訴えている」と報道しています。また、大使館の広報活動として、Hogan & HartsonやHecht, Spencer and Associates、Fratelli GroupなどのPR会社と契約し、影響の拡大を阻止するために努力していると伝えています。なお、日本大使館は今回の意見広告に関してウエブで「意見広告と政府は無関係である(This advertisement was sponsored by members of a private group, and was neither sponsored by, nor associated with the Government of Japan)」と書いています。
The Hillは、ホワイトハウスの反応に関して「ブッシュ政権は決議案に対して以前以上に関心を抱いており、決議案が通れば日米関係に悪影響があると考えている」と伝えています。なお、別の韓国の『朝鮮日報』は、「関係筋によると、チェイニー副大統領は意見広告に不快感を表明し、どのような経過で意見広告が掲載されたのか調査するように命じた」と伝えています。
The Hillは「意見広告を掲載したグループは日本の政治の主流派ではなく、ウルトラ・ナショナリストとウルトラ保守主義者のグループであると分析し、「彼らは日本が余りアメリカに対して友好的であり、あまりにも従順であると考えている」という情報筋のコメントを紹介しています。なお、同決議案に明確に反対している日系のダニエル・イノウエ上院議員は、ホンダ議員、ラントス議員に書簡を送り、決議案に反対の意を伝えています。
『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙(6月19日)は、長文のAP電を掲載しています。以下、その要約です。まず意見広告に対する反応に関して、「意見広告は決議案の勢いを強めることになった」という議員たちのコメントを紹介しています。さらに「意見広告は多くの議員に決議案に賛成票を投じるのを納得させる結果となった。私の理解するところでは、意見広告は決議案の支持を集めることになった」という決議案の提案者マイケル・ホンダ議員のスタッフダニエル・コーンズのコメントを引用しています。また、意見広告の内容に関して、コーンズの「意見広告で主張されていることは何年も言い続けられており、ホンダ議員は“既に根拠がないと証明されている事柄に対して反応することはない。反応することは、証言した女性を嘘つきと呼ぶのと同じである」との発言を引用しています。
また意見広告で戦後、「米軍が慰安所の設置を求めた」という指摘に対して、議会調査局(Congressional Research Service)からホンダ議員は報告を受けたことを明らかにし、「同慰安所は1945年8月から46年3月まで設置された。その設置は日本の女性をアメリカ兵から守るために近江文麿が提案したものである」と、その内容を伝えています。さらに同報告は「性病の蔓延(1000名のうち274名が罹病)と従軍神父の介入によって米陸軍は慰安所への立ち入りを禁止した」との記述があることも伝えています。
オーストラリアのAAPは、Friends of Comfort Women in Australiaの代表者の次のようなコメントを紹介しています。「生存者による多くの証言は“従軍慰安婦制度”が日本軍の性的奴隷制度であることを明らかにしている。慰安婦は決して報酬を求めることはなかったし、与えられたこともなかった」。意見広告では、慰安婦は将軍よりも高い所得であったと主張されています。また同紙は、米議会で従軍慰安婦問題について証言した84歳のオーストラリア人の元慰安婦のJan Rff-O’Heneの「私の日本政府に対する尊敬は地に落ちた。」というコメントを紹介しています。
以下は、委員会で採決された後のアメリカのメディアの報道の紹介です。
今回の決議案採択は『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』『「ボストン・グローブ』『フィラデルフィア・インクワイヤラー』『フォックス・ニュース』『「NBCニュース』『「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』など主要メディアが取り上げています。ただ『ニューヨーク・タイムズ』はAP電と東京特派員の記事を掲載していますが、他のメディアはすべて「ロイター」「AP」「AFP」通信社の配信原稿を掲載し、独自の記事を掲載しているメディアはありませんでした。したがって、多くのメディアはほぼ同じ内容の記事を掲載しています。これは、アメリカの記者にとって従軍慰安婦決議案に対する関心がそれほど高いものではないことを示唆していると思われます。また続報もありません。
各メディアの記事の取り扱い方も比較的公平で、決議案の賛成者だけでなく、批判者の声やアメリカ政府、安倍首相の発言も正確に報道しています。表現も感情的なものはほとんど感じられませんでした。以下、メデフィアに掲載された文章を紹介します。
【メディアの報道】賛成者の代表としてラントス委員長の「日本はアジアにおける最大の友人であり、世界で最も緊密な同盟国の1つである。しかし、日本が従軍慰安婦であった女性たちに正式謝罪をすることを拒絶することは、こうした関係を評価するすべての関係者にとって当惑するものである」「ドイツは正しい選択をした。しかし、日本は歴史を忘れようとしている。事実は明白である」との発言が紹介されています。また批判的な立場として、匿名で「日本は謝罪したが、歴史的な責任を取ったことはなかった」との発言も引用されています。
決議案に反対したタンクレド議員(共和党)の「消滅した帝国軍の残虐行為に対して日本政府に歴史的責任を取れと要求するのは、非生産的であり、日本の人々にとって公平ではない」との発言を紹介しています。これは議員の間にも意見の相違があることを示しています。
【政府の反応】アメリカ政府の対応としてホワイトハウスのケーシー報道官の「決議案は議会で決めたことである。議会と政府は独立した機関である」との発言を紹介している。また、訪米中に安倍首相が行った説明に対してブッシュ大統領が「非常に率直で心から出たものであると語った」ことを紹介しています。
【今後の展開】ラントス委員長は「私たちはアメリカの良き友人であり同盟国の日本が従軍慰安婦問題を認めることを拒んだからといって、日本をいつまでも罰するべきだと考えていると思わないでもらいたい」と語っています。同議員と強硬派のホンダ議員の間には明らかに温度差があると見られます。かりに下院本会議で決議案が成立し、日本が明確な対応を取らなかったとしても、議会は次の行動に出る可能性は少ないことを意味しています。また、今回の決議案に絡んで日米関係が悪化するとのコメントはまったく見られませんでした。
【注目される指摘】注目される報道として「決議案の賛成者はアメリカ政府が戦争中に日系アメリカ人を強制的に収容所に入れたことを1988年に謝罪したのと同じ謝罪を日本に求めている」がありました。
決議案には何の拘束力もありません。また提案議員も、対日制裁などを考えているフシはまったくありません。その意味では、アメリカ議会の決議案は、日本に対して問題提起をしているものだと考えるべきでしょう。日本が戦争責任の問題も含め、どう考え、どう対応しようとしているのかでしょう。沖縄の強制自決問題に見られるように、歴史の修正主義者の勢いが強まっています。本当に戦後の日本の出発点はどこにあるのか、この問題は日本人に問いかけているのです。繰り返しますが、問われているのはアメリカ議会の決議案ではなく、それに日本がどう真摯に答えていき、どう歴史問題に決着をつけていくかだと思います。
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163Re:11、全体批判、中岡望さん
kmiura
2008/08/13 09:32:48
中岡望さんの2007年ワシントンポスト広告"THE FACTS"批判。米国側の当時の脊髄反射を詳しく解説。 http://www.redcruise.com/nakaoka/?p=222 ...
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