日常生活では、どんな店屋の主人でもしごくあたりまえに、ある人が自分がこうだと称する人柄と、その人が実際にどういう人であるのかということを区別することぐらいはできるのに、わが歴史記述ときては、まだこんなありふれた認識にさえも達していないのである。それは、あらゆる時代を、その時代が自分自身について語り、思い描いた言葉どおりに信じ込んでいるのである。 『ドイツ・イデオロギー』
070618
■ [clip][keywords] 婦女売買禁止に関する国際条約関連(キーワード化済)

醜業を行わしむる為の婦女売買禁止に関する国際条約
http://ianhu.g.hatena.ne.jp/kmiura/20070601
に関連する情報。
反論1: 吉見さんの論に対する批判:国際条約は植民地には適用されなかった。などなど。
半月城通信36号から
http://www.han.org/a/half-moon/hm036.html
公娼制度とは国家公認の売買春制度で、1956年、売春防止法で廃止されるまで続いた人身売買・強制売春のシステムでした。公娼制度の下では、指定された地域で、「売春」業者の営業を認め、貧困ゆえに娼妓に売られた女性たちが前借金にしばられて遊郭に閉じ込められて売春を強要されました。金で性を買いに来る遊郭の男性たちにとっては、都合のよい遊び場でありましたが、性奴隷にされた女性たちにとっては「苦界」でした。
国家はこうした男女の歪んだ性関係を公娼制度として認め、保護しました。そのひきかえに業者や娼妓自身からも国家は税金をとっていたのです。このことは、「売春」業者たちには「納税業者」としての胸をはらせ、男性遊客に対しては、心に何らのやましさも感じさせることなく「買春」行為を行わせたのです。ちなみにその税金がたとえば、自由民権運動の弾圧費にまわされたこともありました。
このように公娼制度は、女性の性奴隷ですが、国家による民衆の性統制システムであります
(アジア女性資料センター編「『慰安婦』問題Q&A」P32)
1921年、大戦終了後設立された国際連盟で改めて婦女売買禁止条約が締結されることになった。その第1条で、連盟加盟国のうち1904年の国際協定、1910年の国際条約に未加入国は速やかに加入すべきことがうたわれ、2,3,4条で違反者への処罰等必要な国内法体制を整備することを決めている。「民族自決」を掲げる連盟だけに、はじめて「白人奴隷」だけでなく有色女性も対象になったのだ。
当然日本も加盟を要請された。そこで問題になったのが国内法との矛盾である。婦女禁売条約への加盟は1904年の国際協定、10年の国際条約加盟を意味したが、国際条約第1条、第2条には次のように書かれていた。
「第1条 何人たるを問わず、他人の情欲を満足せしむる為、醜行を目的として詐欺により又は暴行、権力乱用その他一切の強制手段を以て成年の婦女を勧誘し又は拐去したる者は・・・罰せられるべし。
第2条 何人たるを問わず、他人の情欲を満足せしむる為、醜行を目的として詐欺により、又は暴行、脅迫、権力乱用その他一切の強制手段を以て成年の婦女を勧誘し又は拐去したる者は・・・罰せられるべし」
つまり、売春目的で女性を売買することは、未成年の場合は本人の承諾があっても不可、成年の場合も詐欺・暴行・脅迫などの強制によるものは不可というわけだ。その場合の成年は10年の条約では20歳だったが、21年の禁売条約で21歳に引き上げられた。
しかし日本の公娼の制限年齢は、娼妓取締規則第1条で18歳となっていた。このギャップをめぐって外務省と内務省の姿勢は大きく違った。大ざっぱにいえば国際的潮流にさらされる外務省は国際法優先、それに対して内務省は国内法優先、場合によっては調印拒否もあり得るとした。公娼の大半が18歳から21歳に集中していて、業者に与える影響が大きかったからだ。
結局、日本は内務省の線に沿い、調印にあたって成年年齢を18歳に引き下げ、さらに植民地である朝鮮・台湾・関東州・樺太・南洋委任統治地域には適用しないとの留保条件を付けた。年齢に条件付き調印は日本のほかはシャム(タイ)・インドだけである。
これに対しては内外から非難の声があがった。とくに1923年9月の関東大震災で吉原遊郭の娼妓が多数焼死したことから公娼制に対する国際的非難が高まったが、政府は、娼妓は人身売買ではなく自由業である、芸妓は芸術家であるなどと主張して失笑を買った。
そして25年6月、留保条件をつけたまま婦人禁売条約の批准をはかった。婦人矯風会、廓清会など廃娼団体は一斉に反対の声を上げ、枢密院に無条件批准を働きかけた。
東京朝日新聞も「ゲイシャガールを富士山と共に名物とし、吉原を日光と併べて名所とすることは、我が国の誇りではあるまい」と批判した。
(途中省略)
こうした運動が一定の功を奏し、10月22日の批准に当たっては「適当なる時期」に留保条件を見直すことが約束された。そして27年2月、約束どおり年齢制限についての留保は撤廃。しかしそれにともなう娼妓取締規則など国内法の改正はなされなかった。
また、もう一つの留保条件、植民地への適用除外は撤廃されなかった。にもかかわらずこれに対する抗議の声は上がっていない。
(加納「『婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約』と『慰安婦』問題」法
学セミナー97年8月号)
「マクドゥーガル報告の該当部分」ヘボ仮訳かましたんで、貼っておきます。こりゃ、日本政府は嫌がりますね。
申し訳ないですが、長いコメなんで、コピーされたら翻訳部分は消しといてください。
それと、もうすぐバウネットの本が届くんで、そのときはまた連絡します。
B. Slavery, including sexual slavery
B.奴隷制(性奴隷制を含む)
27. The 1926 Slavery Convention sets out the first comprehensive and now the most widely recognized definition of slavery. As adapted from the 1926 Slavery Convention,"slavery" should be understood to be the status or condition of a person over whom any or all of the powers attaching to the right of ownership are exercised, including sexual access through rape or other forms of sexual violence.
27.1926年の奴隷条約において最初の包括的な奴隷制の定義が明記され、その定義は現在も広く認められている。1926年の奴隷条約からの引用のとおり、「奴隷制」とは一個人に対して所有権に付随する権力の一部もしくは全部が、一個人に対して行使されている状況もしくは状態であると解釈するべきであり、強姦などの性暴力の形態による性的接触を含む。
28. In addition to treaty law, the prohibition of slavery is a jus cogens norm in customary international law. The crime of slavery does not require government involvement or State action, and constitutes an international crime whether committed by State actors or private individuals. Further, while slavery requires the treatment of a person as chattel, the fact that a person was not bought, sold or traded does not in any way defeat a claim of slavery
28.奴隷制の禁止は、条約法に加え、国際習慣法上でも強行規範*である。奴隷制という犯罪では、政府の関与もしくは国家の行為は必須ではなく、国家関係者が成したか私人が成したかに関わらず国際犯罪である。さらに、奴隷制には一個人を所有物として取り扱うことが必須だが、一個人が売買されていない事実をもって無効となることは決してない。
*強行規範(jus cogens norm)=いかなる逸脱も許されない規範
29. Implicit in the definition of slavery are notions concerning limitations on autonomy, freedom of movement and power to decide matters relating to one's sexual activity. [M. Cherif Bassiouni,"Enslavement as an International Crime", New York University Journal of International Law and Politics vol. 23 (1991) p. 458.] The mere ability to extricate oneself at substantial risk of personal harm from a condition of slavery should not be interpreted as nullifying a claim of slavery. In all cases, a subjective, gender-conscious analysis must also be applied in interpreting an enslaved person's reasonable fear of harm or perception of coercion. This is particularly true when the victim is in a combat zone during an armed conflict, whether internal or international in character, and has been identified as a member of the opposing group or faction.
29.奴隷制の定義に暗示されているのは、個人が自分の性的行為に関する事柄を決定するにあったっての自律の制限、移動の自由と権利行使の制限に関する概念である。[M. Cherif Bassiouni,"Enslavement as an International Crime", New York University Journal of International Law and Politics vol. 23 (1991) p. 458.]
奴隷である状況により個人に危害が加えられる可能性がある場合に自発的に逃れることが可能であっても、それを奴隷であるという主張の正当性が無効になると解釈すべきではない。また、すべての事例において、主観的分析およびジェンダーを意識した分析は、奴隷にされた一個人の危害に対する筋が通った恐怖もしくは強制の認識による当然の恐怖を反映したものとして、主観的分析およびジェンダーを意識した分析を行わなければならない。被害者が、国内紛争か国際紛争かに関わらず、武力紛争中の戦闘地域にいた場合、また、敵対集団もしくは敵対派閥の一員として認識されている場合は、このこと*は特に真実である。
* 前文で述べられている内容、性奴隷の主観的な証言や性的行為にたいする証言は、強制や暴力に対する当然の恐怖を表していること。
30. The term"sexual" is used in this report as an adjective to describe a form of slavery, not to denote a separate crime. In all respects and in all circumstances, sexual slavery is slavery and its prohibition is a jus cogens norm. The"comfort stations" that were maintained by the Japanese military during the Second World War (see appendix) and the"rape camps" that have been well documented in the former Yugoslavia [For example, see ICTFY, Indictment of Gagovic and Others, case IT-96-23-I (26 June 1996) [hereinafter Foca Indictment]. are particularly egregious examples of sexual slavery. Sexual slavery also encompasses situations where women and girls are forced into"marriage", domestic servitude or other forced labour that ultimately involves forced sexual activity, including rape by their captors.
(snip)
本報告書では、「性的(sexual)」という用語を奴隷制の一形態を説明するための形容詞として使っており、一個の独立した犯罪として名称を与えるための形容詞ではない。
あらゆる観点からみても、あらゆる状況においても、制奴隷制は奴隷制度であり、奴隷制度の禁止は強行規範である。第二次世界大戦中に旧日本軍が管理維持した『慰安所』(付属文書(appendix)参照)や、旧ユーゴスラビアで明確に立証されている『レイプ収容所』(例、ICTFY, Indictment of Gagovic and Others, case IT-96-23-I (26 June 1996)参照、以降フォカ事件と記す)は、性奴隷制の極めて悪質な例である。また、性奴隷制は成人女性や少女に対する強制的な「婚姻」、家庭内労働などの最終的に強制的な性的活動に伴う結果となる強制労働の状況を網羅するものであり、捕獲者によるレイプも含まれる。
(以下略)
31. Sexual slavery also encompasses most, if not all forms of forced prostitution. The terms"forced prostitution" or"enforced prostitution" appear in international and humanitarian conventions but have been insufficiently understood and inconsistently applied. "Forced prostitution" generally refers to conditions of control over a person who is coerced by another to engage in sexual activity.
31.また、性奴隷制はすべてではないが、ほとんどの形態の強制売春をも網羅するものである。『強制売春(forced prostitution もしくは enforced prostitution)』という用語は、種々の国際的人道法に出てくるが、理解は不十分であり、適応にも一貫性がない。『強制売春』は、他人によって強制的に性的活動に従事させられた個人が支配されている状況を意味することが多い。
32. Older definitions of forced prostitution focus either in vague terms on"immoral" attacks on a woman's"honour", or else they are nearly indistinct from definitions that seem more accurately to describe the condition of slavery. Despite these limitations, as the crime is clearly criminalized within the Geneva Conventions and the Additional Protocols thereto, it remains a potential, albeit limited alternative tool for future prosecutions of sexual violence in armed conflict situations.
32.今までの強制売春の定義では、曖昧な表現で、女性の「名誉」に対する「不道徳な」攻撃という点に焦点を当てたものと、奴隷制の状況をより正確に説明したようにみえる定義とほぼ差異がないものがある。このような制約はあるものの、ジュネーブ条約とその追加議定書において強制売春は明らかに犯罪とされており、武力紛争の状況下での性的暴力を今後告発できる代替可能な方法として、制約はあるもの、依然として有力である。
33. As a general principle it would appear that in situations of armed conflict, most factual scenarios that could be described as forced prostitution would also amount to sexual slavery and could more appropriately and more easily be characterized and prosecuted as slavery.
33.一般原則として、武力紛争の状況下での強制売春と説明しうる事実関係のほとんどが、実のところは性奴隷制であり、奴隷制として特徴づけ告発するほうが、より的確でより容易であると思われる。
うわー、ありがとうございます。翻訳の内容を一応チェックしまして、そののちにそれをもう一度Stiffmuscleさんに確認していただいたのち、「性奴隷制の定義」としてキーワード化したいと思います。
訳出のときに参考にしたリンク上げておきます。
人身取引に関する国際条約と我が国の法制の現状( 論)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/220/022002.pdf
マクドゥーガル報告書 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/マクドゥーガル報告書#.E5.A4.96.E9.83.A8.E3.83.AA.E3.83.B3.E3.82.AF
【増補新装2000年版】戦時・性暴力をどう裁くか
http://www.gaifu.co.jp/books/2503/mokuji.html
おさかな日記: 性暴力とは?-国連マクドゥーガル報告
http://anemonefish.cocolog-nifty.com/osakana/2007/03/post_ffa6.html
作業のほう、早速取り掛かっておられるんですね。自分の訳文をこうしてチェックしていただくのは大変有難いことです。kmiuraさんのおっしゃられているように、下手な揚げ足を取られないように翻訳して行くという視点は、この文書の場合特に重要ですね。同感です。バウネットの翻訳が最適かどうかは見てみないとわかりませんが、出来るだけ多くの方の目を通して、できるだけ多くの資料で固めていければ、現時点で最適の翻訳ができると信じています。
余談ですが、肩こらないんですよ。でも、筋肉は固いです。