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nagaikazu
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娼妓稼業契約は人身売買か
zames_makiさん
yamaki622さん
私が「日本軍の慰安所政策について」を書いたときに、いちばん悩んだのは、「身売り」と刑法第226条(国外移送目的人身売買罪)の「人身売買」の関係でした。
「身売り」が刑法上の「人身売買」に該当するなら、外国である「満洲国」、中国、東南アジアの占領地の慰安所に送るために、前借金で女性を拘束することは、立派な犯罪となります。この刑法第226条が「からゆきさん」の防止のためにできたとするなら、そう解釈できるように思ったのですが、同時に「身売り」は、芸娼妓解放令にいう「人身売買」とは異なるという法解釈が戦前には存在していたことも指摘されています。
この論文の原形を書いたのは今から十年ほど前でしたが、吉見氏の『従軍慰安婦』では、「身売り」を「人身売買」だとしつつも、刑法第226条のことはふれられておらず、また昭和12年の大審院判決の重要性に注目して、慰安婦制度は国際法にとどまらず国内法である刑法第226条にも違反する犯罪であるとした前田朗氏も、当該大審院判決が、「身売り」ではなくて「就業詐欺」にかかわるものであったこともあり、「身売り」=「人身売買」=刑法第226条の国外移送目的人身売買罪であるとの議論にまでは踏み込んでおられませんでした。
そのため、私の論文は、「身売り」≠刑法第226条の「人身売買」という説をとり、以下のように書きました。
このような条件でなされる娼妓稼業契約は「身売り」とよばれ、これが人身売買として認定されておれば、大内の行為は「帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買」するものにほかならず、刑法第226条の人身売買罪に該当する。しかし、当時の法解釈では、このような条件での娼妓契約は「公序良俗」に違反する民法上無効な契約とはされても、少なくとも日本帝国内にとどまるかぎりは、刑法上の犯罪を構成する「人身売買」とはみなされなかった。
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/works/guniansyo.html
しかし、刑法第226条の解釈として、上記ではたして正しいのかどうか、今でも疑問には思っています。
(じつは、最初にこの論文を発表した時には、太字部分はありませんでした。上記の疑問が払拭できないので、Web版では、太字部分を補いました。これを補うとこの部分の意味の一貫性がなくなるのは、自分でもわかっていたのですが、あえていれることにしました)
この疑問を解くには、戦前における刑法第226条の解釈および判例などを綿密に検討する必要があるとは思っているのですが、なかなかそちらに手がまわらずに、時間のみが経過してしまいました。
なお言っておきますが、前田朗氏によれば、日中戦争がはじまってからは刑法第226条は事実上の「不処罰罪」となったそうですの、当該時期に「身売り」が実際にこの条項の「人身売買」とみなされて裁判された例はないようです。「ようです」というのは、自分で実際に戦争中の刑事裁判記録を調べたわけではないからです。
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14娼妓稼業契約は人身売買か
nagaikazu
2007/06/05 21:04:49
zames_makiさん yamaki622さん 私が「日本軍の慰安所政策について」を書いたときに、いちばん悩んだのは、「身売り」と刑法第226条(国外移送目的人身売買罪)の「人身売買」の関 ...- └
20Re:娼妓稼業契約は人身売買か
yamaki622
2007/06/06 11:41:03
永井先生へ ご教示ありがとうございます。 ご指摘いただくまで「身売り」と「人身売買」は同じものだと思ってました。ものすごく単純な言い方をすれば、「身売り」は本人が不本意ながら泣く泣く納得し ...- └
22Re:Re:娼妓稼業契約は人身売買か
nagaikazu
2007/06/06 14:46:04
yamaki622さんへ ご指摘いただくまで「身売り」と「人身売買」は同じものだと思ってました。 常識的には同じだと思います。刑法上は「人身売買」という言葉が使われていますが、外務省 ...- └
24Re:Re:Re:娼妓稼業契約は人身売買か
yamaki622
2007/06/06 20:21:15
永井先生へ 丁寧に解説していただいてありがとうございます。よくわかりました。 しかし、「国外移送目的人身売買罪」で実際にどのような行為が処罰されていたのか、判例にあたって、裏付けをと ...
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24Re:Re:Re:娼妓稼業契約は人身売買か
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22Re:Re:娼妓稼業契約は人身売買か
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20Re:娼妓稼業契約は人身売買か
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