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11noharranoharra   7  Re:Re:控訴棄却の理由(請求権の壁)

請求権の壁などについて考えようとしてみましたが、苦手な分野なので、だらだら長いだけになってしまった。

(1)

http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/8/4#p3

毎日新聞による端的なまとめでは「三つの壁」がある。

 戦後補償を求める裁判には三つの壁がある。

α.47年の国家賠償法施行前の国の行為は責任を問えないとする「国家無答責」の壁と、

β.時効や除斥期間という「時間の壁」。

γ.そして、平和条約などによって国家の賠償義務が消滅したとする「請求権の壁」だ。

しかしながら数多くの裁判のなかで

αについては

 しかしながら、国家無答責の法理は、旧憲法下における判例の所産にすぎず、当時でさえ有力な学説が批判を加えていたこの法理を、現憲法下において何らの悩みもなく日本の統治権に服していなかった原告ら中国人に適用することは、司法の職責を放棄するに等しいものである。

βについては

 しかしながら、昭和40年8月末日の時点では、日中の国交が回復しておらず原告らは権利行使をしようにもできなかったのである。筑豊じん肺訴訟最高裁判決は、除斥期間についても、権利行使可能性の視点を明確にしており、判決はこの判断とも明らかに矛盾するものである。

http://homepage.mac.com/ikenagaoffice/

などの批判が積み重ねられた。

それにより

しかし,2001年の劉連仁訴訟一審判決以来,福岡強制連行事件,毒ガス一次事件,新潟強制連行事件などでは,これら法的な「壁」を突破する判決が続々と言い渡されるようになってきました。これまで圧倒的に不利だった原告が,だんだんと国や企業を追いつめるようになってきたのです。


すると,このころから国は,「請求権放棄」論を主張するようになってきました。

http://www.suopei.org/koza/law/law001.html

(2)

で、このγについて詳しく見ると、前提はサンフランシスコ講和条約です。

 14条(b)この条約に別段の定がある場合を除き,連合国は,連合国のすべての賠償請求権,戦争の遂行中に日本国及びその国民がとつた行動から生じた連合国及びその国民の他の請求権並びに占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T1J.html


2001年にオランダ人元捕虜損害賠償請求事件の東京高裁判決があった。

裁判所は、同条項をめぐるサンフランシスコ会議での日本代表団とオランダ代表団の交渉過程を詳細に検討した後、「連合国国民の個人としての請求権も、連合国によって『放棄』され、これによって、連合国国民の実体的請求権も消滅したと解するのが相当である」と判示した。この判決最高裁においても維持されて確定した。

p32 No1321『ジュリスト』浅田正彦


その後、中国人慰安婦第2次訴訟判決2005年)においては、「日華平和条約によって請求権は放棄された」とされた。

14条(b)について「(国民の)請求権自体を包括的に放棄する趣旨であったと解すべき*1」と述べたらしい。

(2) 日華平和条約11条は,連合国による賠償請求権等の放棄を規定したサンフランシスコ平和条約14条(b)に従うことを定めるところ,ここでいう請求権放

棄とは,外交保護権の放棄にとどまらず,請求権自体を包括的に放棄する趣旨であったと解すべきである。よって,第二次世界大戦の遂行中に日本軍兵士らによる上記加害行為から生じた中国国民である上告人X1及び亡Aの損害賠償請求権は,日華平和条約によって放棄されたと解すべきである。


それで今回の最高裁判決は理由を「日中共同声明によって請求権は放棄された」に変えた。

ホップ、ステップ、ジャンプという感じでそれぞれ飛躍がある。


判決文を読んでみても説得力を感じられない。

まず、判決

サンフランシスコ平和条約の5項目を列挙する。

(14条(a)柱書き)(14条(a)1)(14条(a)2)(14条(b))(19条(a))

次に「日華平和条約」に触れ、「両国間に戦争状態の存在の結果として生じた問題はサンフランシスコ平和条約の相当規定に従って解決するものとすること(11条)等の条項」の条項の存在を指摘する。

で次が「日中共同声明」であるが

(1) 日中共同声明5項は,「中華人民共和国政府は,中日両国国民の友好のために,日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」と述べるものであり,その文言を見る限りにおいては,放棄の対象となる「請求」の主体が明示されておらず,国家間のいわゆる戦争賠償のほかに請求権の処理を含む趣旨かどうか,また,請求権の処理を含むとしても,中華人民共和国の国民が個人として有する請求権の放棄を含む趣旨かどうかが,必ずしも明らかとはいえない。

わけである。

(2) しかしながら,公表されている日中国交正常化交渉の公式記録や関係者の回顧録等に基づく考証を経て今日では公知の事実となっている交渉経緯等を踏まえ

て考えた場合,以下のとおり,日中共同声明は,平和条約の実質を有するものと解すべきであり,日中共同声明において,戦争賠償及び請求権の処理について,サンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる取決めがされたものと解することはできないというべきである。

ウ以上のような日中国交正常化交渉の経緯に照らすと,中華人民共和国政府は,日中共同声明5項を,戦争賠償のみならず請求権の処理も含めてすべての戦後処理を行った創設的な規定ととらえていることは明らかであり,また,日本国政府としても,戦争賠償及び請求権の処理は日華平和条約によって解決済みであるとの考えは維持しつつも,中華人民共和国政府との間でも実質的に同条約と同じ帰結となる処理がされたことを確認する意味を持つものとの理解に立って,その表現について合意したものと解される。

以上のような経緯を経て発出された日中共同声明は,中華人民共和国政府はもちろん,日本国政府にとっても平和条約の実質を有するものにほかならないというべきである。

創設的な平和条約であるという点は良いだろう。

そして,前記のとおり,サンフランシスコ平和条約の枠組みは平和条約の目的を達成するために重要な意義を有していたのであり,サンフランシスコ平和条約の枠組みを外れて,請求権の処理を未定のままにして戦争賠償のみを決着させ,あるいは請求権放棄の対象から個人の請求権を除外した場合,平和条約の目的達成の妨げとなるおそれがあることが明らかであるが,日中共同声明の発出に当たり,あえてそのような処理をせざるを得なかったような事情は何らうかがわれず,日中国交正常化交渉において,そのような観点からの問題提起がされたり,交渉が行われた形跡もない。したがって,日中共同声明5項の文言上,「請求」の主体として個人を明示していないからといって,サンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる処理が行われたものと解することはできない。

エ以上によれば,日中共同声明は,サンフランシスコ平和条約の枠組みと異なる趣旨のものではなく,請求権の処理については,個人の請求権を含め,戦争の遂行中に生じたすべての請求権を相互に放棄することを明らかにしたものというべきである。

うーん。

サンフランシスコ平和条約の枠組み」論というのを、この判決は出してきます。でその「枠組み論」だけで押し切って「個人の請求権放棄」にまで持ってくるわけす。が、日中共同声明締結時にそんなものが意識されたなんて事はないですよね?

であれば、全然無理な論理ということになりましょう。

*1:同上 浅田

返信2007/04/29 22:41:15
  • 11Re:Re:控訴棄却の理由(請求権の壁) noharranoharra 2007/04/29 22:41:15
    請求権の壁などについて考えようとしてみましたが、苦手な分野なので、だらだら長いだけになってしまった。 (1) http://ianhu.g.hatena.ne.jp/bbs/8/4#p3 毎日新 ...